CVCの投資スキーム
企業のベンチャーキャピタル(CVC)活動において、投資スキームの選択は重要な戦略的決定です。本記事では、主要な3つの投資スキームについて、それぞれのメリット、デメリット、具体的な事例を紹介します。
FIRST CVCではCVCに向けたCVC立ち上げの検討支援などを行っていますので、投資スキームの検討でお悩みの方はご連絡ください。
1. 本社BS出資
本社のバランスシートを使用して直接投資を行うスキーム。
メリット
- 投資先に直接的な統制や経営影響を与えられる
- 戦略的リターンを重視したインセンティブが働く
デメリット
- 稟議プロセスなど事業運営の負担が大きい
- 親会社の会計基準の影響を受ける
- 本体の人事制度の影響でVC投資のノウハウ蓄積が遅れる可能性がある
事例:TOPPAN
TOPPANは、CVC子会社を設立せず、事業開発本部傘下に戦略投資センターを設置。センター内に以下の部門を配置:
- CVC部:投資実行
- PoC部:重要投資先とのPoC実施
- 管理部:バックオフィス業務
特筆すべき点として、管理部員にもソーシング役割を与え、センター全体でスタートアップの積極的な開拓に取り組んでいる。
2. 子会社BS出資
子会社を設立し、そのバランスシートを使用して投資を行うスキーム。
メリット
- 柔軟な人事制度の設計が可能
- 投資の「色付け」を回避し、自由度を確保
デメリット
- 子会社の設立・運営コストが発生
- 子会社の会計基準の影響を受ける
- 出資プロセスが煩雑になる可能性がある
事例:日本郵政
2017年11月1日、ベンチャー投資を行う戦略子会社「日本郵政キャピタル株式会社」を設立。
- 年間予算:50〜60億円(親会社からの借入)
- 投資規模:1社あたり2〜20億円
- 特筆点:設立から2〜3年後、郵政グループからの出向者が増加し、事業連携の実効性が向上
3. VCと二人組合
外部のベンチャーキャピタルとファンドを共同設立し投資を行うスキーム。
メリット
- 出資と運営のリターン・リスク分担
- 有限責任法に基づく会計基準・運営
- 投資プロセスのノウハウ活用
デメリット
- 意思決定プロセスの複雑化
- ファンドの設立・運営の外部委託コスト
- ファンド運営期間の制約
- 財務リターン重視のインセンティブが働く可能性
事例:東急建設
2022年2月、VC大手のグローバル・ブレインと共同で「TOKYU-CONST GB Innovation Fund L.P.」(総額50億円)を設立。
- 特筆点:出資・連携側と運営側を分離し、リスク・リターンを分担
まとめ
CVCの投資スキームは、企業の戦略、リソース、目標によって最適な選択が異なります。本社BS出資は直接的なコントロールを重視する場合に、子会社BS出資は柔軟性を求める場合に、VCとの二人組合は専門性とリスク分散を重視する場合に適しています。各企業は自社の状況を十分に分析し、最適なスキームを選択することが重要です。
